札幌 COCONO SUSUKINO のLEDビジョンの音響にTANNOY VLS15が採用されました。
2023年11月30日にオープンした北海道札幌市すすきの の複合商業施設「COCONO SUSUKINO(ココノ ススキノ)」。その外壁に設置された屋外LEDビジョンの音響設備にTANNOY VLS15が採用されました。
LEDビジョンはアビックス株式会社様、そして音響機器の選定/施工/調整は日本レディフュージョン株式会社の武内 氏という、東急歌舞伎町タワー JAM17 と同じチームが携わり、インパクトのあるサイネージが完成しました。
この案件では物件の意匠による音響的な困難があったということです。機転を利かせてそれを乗り越えた武内 氏にお話しをうかがいました。
納入機材:
TANNOY VLS 15(パッシブコラムアレイスピーカー。15基ドライバー)× 2
LAB.GRUPPEN IPX 2400(2400W 1U 2チャンネルDSP搭載パワーアンプ)× 1
whirlwind PC USB(PCのUSB出力用 ダイレクトボックス)× 1
日本レディフュージョン 武内 氏(以下略「武内 氏」):VLSはこれまでよく使ってきました。錦糸町パルコ 様やキュープラザ池袋 様でもVLSとLab.Gruppenアンプの組み合わせを使いました。こういう(サイネージの)仕事ではよく使っていますね。
VLSは製品の資料で3D CADのデータがあるので助かります。このような案件でその都度アングルを作らないといけないのですが、製作業者に発注する際にCADデータを送ることで精度の高いものが作れます。
VLSの中でも15を選んだのは、札幌市の規定で「拡声機の設置高さは10メートル以下」と決まっていたからです。それで条件を満たす長さの15を選びました。スピーカーの頭頂部がぎりぎり地上10m以下となっています。
武内 氏:A点に設置されたVLSは北に向いており、交差点と市電ホームあたりに向けて音を出しています。実はB点とC点にも他社のLEDビジョンとスピーカーが設置されていて、すべてが交差点に向けて音を出していました。
調整の結果、他にかき消されることもなくとてもはっきりスッキリと良い音で出すことができました。幸いなことに東側の道向かい①にもはっきり声が届いていて、これも良かったと思っています。
武内 氏:資料としてデータを残す必要があるため測定器はもちろん使うのですが、そのデータは街の騒音も含んでいるためメーターを見るだけで調整はできません。最終的には自分の耳を使って行います。
ここはフルレンジで音楽を聴かせる必要はありません。広告ではしゃべっている言葉がはっきり聴こえることが重要です。調整の結果すっきりとしていながらもしっとりした聴きやすい音になりました。
武内 氏:それは市の規定に沿った設置をして、音のクレームが出ないようにすることです。街の人に向けて出す音なのでそこが大事です。
武内 氏:スピーカーを交差点に向けたときにどれだけ音が広がるのかをEASE FOCUSでシミュレーションしていた時の話ですが、交差点の中央まで届く音量にするとテラスがうるさくなってしまうことが分かりました。
武内 氏:この写真は同じものを違う場所から撮ったものです。写真①を見ると右スピーカーがテラスに近いことが分かると思います。写真②はそのテラスに立って撮りました。この右スピーカーの音量を何とかしないといけなくなりました。
武内 氏:このビルにはローカルのFMラジオ局が入っていて、写真①のように番組の模様がLEDビジョンに映し出される時間があるのです。番組ではMCとゲストが左右に分かれた画角になり、それぞれの声がLRに分かれてステレオで流れています。つまりスピーカーの音量を下げただけでは右側の話者の声が聴こえにくくなってしまいます。
KLARKTEKNIK DM8500のようなDSPを使えば解決できることは分かっているのですが、ビルの構造にテラスがあるというのが分かったのが、見積もりで決まった機材を入れる段階になってからでした。もう大きな変更ができない状態でしたね。
武内 氏:
アナログで、- ステレオソースをサミングしたモノラルソースを左スピーカーだけから出力
- ステレオソースをそのまま左右のスピーカーから出力
という2つの状態を切り替えて使うことにしました。流れているコンテンツに合わせて管理者様に任意で切り替えていただくことで、柔軟に対応できます。そのために市販のDJミキサーを利用してこのようなシステムを作りました。
セットトップボックスとなるPCとUSB経由で接続されたPC USBでD/AされたLRのバランス信号を、特製のケーブルで「サミングモノ」と一般的な「ステレオ」に分けます。サミングモノは1ch入力の左だけに入れ、ステレオソースは2ch入力の左右に入れます。
こうすることで、クロスフェーダーで2種類のスピーカーの使い分けをスムーズに行えます。
武内 氏:これは自作しました。ステレオソースをモノラルにサミングすると音量が上がるため、それを回避するためにバッファーとして抵抗も入れてあります。
2本鳴っているスピーカーが1本になった時の音量差はミキサーの入力ゲインで調整して合わせているので、クロスフェーダーをどちらにしても音量感は同じです。
武内 氏:クロスフェーダーの方が優しく切り替えができるためです。スイッチだと押したときに大きなノイズが出ることがあるので広告では使えません。
武内 氏:PC USBはドライバーも電源も必要なく、USBケーブルでPCと繋ぐだけで音が出ます。シンプルで使いやすいのでこれで十分です。これも私がよく使う機材ですね。
武内 氏:TANNOY AMS(壁掛け型スピーカー)とLAB.GRUPPEN CA(省電力・コマーシャルパワーアンプ)の組み合わせはよく使っています。芯のある音が出て、かつうるさくなく、ボリュームを小さくしても腑抜けた音にはならない。このセットはすごく好きですね。
DJミキサーのクロスフェーダーと自作した特製ケーブルで課題をクリアした武内 氏。限られた条件や厳しい制限と向き合う「デジタルサイネージの音響」の奥深さを知りました。
アビックス株式会社
〒231-0007 神奈川県横浜市中区弁天通6-85 宇徳ビルディング4F
https://avix.co.jp/
日本レディフュージョン株式会社
〒111-0052 東京都台東区柳橋1-5-5 REXビル8F
https://www.nrlmusic.co.jp/