渋谷からカッティングエッジな音楽シーンを発信するライブハウス「渋谷WWW」の音響改修で、パワーアンプにLab.Gruppen PLM20K44が8台導入されました。(上画像は改修後。写真家:山谷佑介 氏の撮影)

Lab.Gruppen PLM 20K44 / 20,000W 4 in 4 out Lake Processor搭載パワーアンプ

スペースシャワーTVが手がける渋谷WWWは、2010年に宇田川町の旧ミニシアター・シネマライズ跡地の地下1階にオープン。収容人数400名のライブハウスです。「ダブリュダブリュダブリュー」「ダブダブ」など様々な愛称で親しまれ、実力のある若いアーティストが憧れるライブハウスとして知られます。2016年には同ビルの2階に収容人数600名のライブハウス「WWW X」もオープンし、国内外のアーティストの音を精力的に発信しています。

開業から13年目で始めて音響改修をした渋谷WWW。今回は最終調整で熱気あふれる中でお話をうかがいました。お話をいただいたのは渋谷WWW店長 笹倉 和広 氏。そして音響の施工及び導入コンサルタントを務める株式会社トライオーディオ代表 東(あずま) 雅明 氏のお二人です。

ブランドの「顔」はそのままで音を刷新

調整時の模様

まずは音響機材のプランを立て、Lab.Gruppenを選んでくださった株式会社トライオーディオ代表の東 氏にお話をうかがいます。
東様にとってWWWとはどのようなライブハウスなのでしょうか

ここがまだ構想段階で場所も決まっていない頃に私は名取 氏(スペースシャワーネットワーク / WWWの立ち上げ人)と出会いました。WWWは彼のこだわりでできていると言えます。

まずここはライブハウスとしては珍しい形状*をしています。ぱっと見ただけで他のライブハウスとは違うことが分かります。他にも舞台の床がヘリンボーンの板張りになっているのもこだわりです。使い込まれると黒く塗ったペンキが剥げてかっこよくなりますよ。

*元は映画館であったため、その形状を活かし、フロアは後方に向けて段差で高くなっている。

機材面では、スピーカーはFUNKTION-ONE。コンソールはアナログのMIDAS Heritage 3000です。さらに音を良くするためにケーブル類はVan Damme(イギリスのハンドメイドケーブルブランド。アビーロードスタジオにも採用)で、電源はキュービクルを音響用に増設して230Vです。100Vだとローがここまで気持ちよく鳴りません。

個性とこだわりが詰まっているのが分かります。そこから始まった改修について教えてください

開業から13年経って機材の修理やトラブルも増えてきたということで改修/機材更新の話が出ました。そこで関係者と話をしたところ「FUNKTION-ONEとMIDASを使っていることがWWWの特徴だ」という意見が多く出ました。

FUNKTION-ONEの最新型を導入することも考えましたが、「今の組み合わせで出る音にWWWのブランド意識を持っている」という関係者の思いもあったため、現在のFUNKTION-ONEを活かした形でリニューアルすることになりました。

まずスピーカーに関しては、リコーンしました。キャビネットはそのままです。これで予算がだいぶ抑えられました。そしてそれまでグランドスタックだったのをフライングしようということになりました。

そして次はアンプです。

Lab.Gruppen PLM 20K44に決めた理由は?

FUNKTION-ONEとLab.Gruppenの組み合わせの音は聴いたこともありませんでしたが、想像はできました。

それに加えて

  • PLM 20K44はLakeが使える
    (アンプとLakeを別に買うよりコストがかからない。置き場所も小さくて済む)
  • 日本に代理店がある
    (ビーテックにサポートやメンテナンスを任せられる)

というシンプルな理由でした。

PLM20K44×4台を納めたアンプラックがステージ上下に設置され合計8台の導入。
フライングされたメインスピーカーは片側で3つのエリアに分けられ、ウーファーやインフィルと共にPLM20K44搭載のLakeで調整さている

PLM 20K44に搭載されたLakeに加え、FOHにはLM44がセットされています。それぞれをどう使われていますか?

アンプのLakeはチャンネルデバイダーとして。FOHにあるLM44は外部からオペレーターが来たときのためのEQとして使ってもらっています。

PLM 20K44の音はいかがですか?

「普通」ですね。

厳しいお言葉を頂戴しました

でもこの「普通」になるということは難しいことなんですよ。料理で例えれば「塩が利いててうまい」というものは塩が多い。「ダシがうまい」というものはダシが強い。では本当にうまいと思ったものはただ「うまい」しか言えません。全てのバランスが良すぎて評価が難しい。「普通」になることが難しいというのはこれに似たことです。これはそういうアンプだと思いました。

しかしキャラクターのあるアンプが欲しいという人もいるでしょう。今回は「このキャラクターが欲しい」という選び方はしていません。

予想通りです。やってほしいことをちゃんとやってくれています。

ほっとしました。率直なご感想をありがとうございました!

余白や余裕のある鳴り方

調整時の模様

続いて店長の笹倉 氏にお話をうかがいました。
この度始めてスピーカーをフライングされたということですね

はい。WWWは開店当初からスピーカーをフライングする予定だったんです。天吊りの機構もあったのですが、諸事情があって床置きで稼働させていたんです。

それから13年経ってようやく”遂に”吊れる事になりました。うちは客席に段差がありますが、フライングすることで下から上まで満遍なく音が届くようになりました。

WWWはほぼ絶えず営業されていますが、いつ更新を行ったのですか?

スピーカーのリコーンは2022年末。貼り替え中は代替機を稼働させて、入れ替えは1~2日間で完了しました。
アンプは正月休みに入れ替え、フライングに関しては休館日を活用して営業を止めることなく実施できました。 短期間で無駄の無い工程を組んでいただいたトライオーディオさんに改めて感謝致します。

ではLab.Gruppenアンプについてうかがいます。音を聴かれた感想はいかがですか?

あくまでイメージですが、これまで100の力で鳴らしていたものを70くらいで鳴らせているような「余白や余裕」のある鳴り方をしていると思います。

これまでWWWは色気(キャラクター)のある音だと思っていましたがLab.Gruppenに替えたことで、L-Acousticsのラインアレイを使っているWWW X*のパキっとした音に少しだけ寄った印象があります。今の時代の音楽性に合うのではないでしょうか。

*WWW Xは同ビル2階にある同系列のライブハウス。収容人数600人。メインシステムはL-Acoustics K2 , SB28 , LA8。

スピーカーのリコーンは音がフレッシュになったという印象でしたが、アンプの入れ替え後は音が変わった印象です。内外からの評判も良く。音に詳しくない人でも分かる変わり方をしたと思います。

ベストなアンプを採用いただけて嬉しいです!

東さん(トライオーディオ)のチューニングも効いています。相当作り込んでくれていますね。東さんは開店当時から携わってくださっています。東さんの耳と腕には多大な信頼を置いています。

東様もWWWには特別な思いがあるご様子でしたので、これからさらに良くなっていきそうですね。

音にはゴールがないと思います。完璧なものもないので、これからも満足することはありません。改修後の音に慣れたらさらに良くしようとするでしょうね。

では最後に、これからのWWWの展望を教えてください。

WWWのメンバーでPOP YOURS*と言う国内最大級のHipHopフェス等のプロモーター事業もスタートさせました。新たな領域にもこれまで得た経験を活かしていきたいです。

*ポップカルチャーとしてのヒップホップをテーマにしたフェス。2023年は5月27日(土)、28(日)に幕張メッセ国際展示場にて開催。https://popyours.jp/

ベニューに関しては、WWWが13年、WWW Xが7年目を迎えますが、ベニューを源流に音楽を通じて多種多様な信頼関係を構築しシナジーを生んでいけたらと考えています。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

この度のインタビューで、渋谷WWWは関係者のストイックな思いとこだわりの工夫でできている場所だと感じました。

スピーカーのキャビネットはそのままに、リコーンとアンプの更新によって新たな音に生まれ変わるという改修のスタイルは、予算を抑えることはもちろん店舗のブランディングをキープできるというメリットもあります。これは渋谷WWWにベストマッチするプランだったと言えるでしょう。今後も進化する音に期待しています。

渋谷 WWW

〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下
https://www-shibuya.jp/

施工及び導入コンサルタント
株式会社トライオーディオ

〒556-0005
大阪市浪速区日本橋4-5-18 アーバンコート日本橋204
https://tryaudiojpn.com/index.html

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