Lakeソフトウェアの特徴について
目次
Lakeの誕生から現在まで
Lakeソフトウェアの誕生のきっかけは1990年代にライブツアーなどで採用されるようになったラインアレイスピーカーのスピーカー間で生じる位相干渉による問題でした。
90年代初めオーストラリアのアデレードで3人のエンジニアがデジタル・シグナルプロセッシングのアプリケーションの開発行う会社(Lake社)を設立しました。Lake社の名前の由来は創業時にオフィスの近くにあった美しい池にちなんで団体名を「Lake」と名付けました。
当時、サウンドエンジニアをしていたBruce JacksonがLakeのDavid McGrathと出会い、デジタルシグナルプロセッサーの開発に取り組み始めました。その先端技術にこれまでにない可能性を感じとったクレアブラザーズ社がスポンサーとなり出資することになりました。
その後Clair Technologies LLC社がBruce Jackson , David McGrath , Ed Meitner (後のEMM-Labs創業者)とクレア兄弟によって設立されます。
当初はClair社専用のライブサウンドプロセッサーの開発に取り組みます。
2001年には待望のLake Contour Pro 26™が発表となりました。
その中心となる技術であるLinear Phase Crossoverはラウドスピーカーのインパルス応答を大幅に改善し、帯域によっては出力パワーを3dB以上改善します。
2004年にはDolby LaboratoriesによってLakeは買収され、Dolbyの世界規模のリソースの恩恵を受けながら、広範なライブサウンド・アプリケーションに対応したプレミアムDSPプラットフォームDolby Lake Processorを2006年に発表しました。
2006年、Dolby社とLab.gruppen社が提携し、Lab.gruppenが開発を進めていた新パワード・ラウドスピーカー・マネージメント・システム、PLMパワーアンプ・シリーズにLakeプロセッシング・テクノロジーの搭載が決定、2007年にはLakeプロセッシング・テクノロジーが搭載された初のPLMシリーズ製品、PLM10000Qが発表されました。
2009年、Dolby社の商業ライブ・マーケットからの撤退を機に、Lab.gruppen社がLake商標、及びDolby Lake Processorテクノロジーの権利を獲得します。Lab.gruppenはSwedenのKungsbacka(クングスバッカ)に本社を構えて、デジタル・プロセッシング研究開発を進めています。その後発表されたのがLM26/LM44のラウドスピーカー・マネージメントプロセッサーです。
Lab.gruppenアンプ・プラットフォームとLake Processingテクノロジーの融合は、SR業界において新たな境地を切り拓いてきました。
その後、Lab.gruppen社のパワーアンプに4チャンネル Contour Moduleを搭載したPLM+シリーズ、Dシリーズを発表しハードウェアのラインナップも増やしてゆきます。
Lakeプロセッサーは発売当初からContour Module、MESA Moduleの2つのモードのみでしたが、2020年7月、Contour Moduleに使用できる新たな機能として「XP Contour Module」を発表し、新しいラウドスピーカーマネージメントへの挑戦を開始しました。
追加機能につきましては以下の通りとなります。(下記詳細につきましては弊社までお問い合わせください。)
- FIRをサポートする、独立したアレイ・オプチマイゼーション専用フィルターを利用できるようになりました。モジュールがロックされている状でも利用可能です。
- 各出力に、FIRをサポートする、設定可能なクロスオーバー。
- 各出力に、最大3つの独立した周波数帯域をサポートするマルチバンドリミッター。
- クロスオーバーEQとは別に非表示やロックを行うことができる、「Pre-Output EQ」と呼ばれる、すべての出力に共通の独立したフィルター。
Raised Cosine Filterについて
Raised Cosine Filterは隣接するフィルター同士の影響を最小限に抑えることができるフィルターです。
これからRaised Cosine Filterの3つの特徴をご紹介します。
① スロープの急峻さ
まずは比較する画像をご参照ください。
下記の図1を例にあげると内側(青色)のRaised Cosine Filter (Input PEQ) は外側(赤色)の通常のPEQと比べてフィルターの両端の開始位置が狭くなっているので、隣接するフィルターの影響を受けることがありません。
アナロググラフィックイコライザーで周波数の範囲を6 dBブーストした場合、図3はフロントパネルのコントロールを示し、図4は結果として得られるオーディオ信号の測定された周波数応答を示します。
図5のIdeal Graphic EQで500 Hzから2 kHzを6 dBブーストした結果をみると隣接するフィルターの影響を受けておらず、各フィルターで設定したゲイン量のみが上がっているのに対して、図4で表示されるアナロググラフィックイコライザーは隣接する周波数に影響を受けてゲイン値が不規則に高くになっている事が確認出来ます。他のEQを使った場合に設定した値と実際の値が異なっていることに気づかずに調整を進めて、結果必要以上のフィルターを追加するケースもあります。
② 非対称カーブの有効化
このRaised Cosine Filterを応用して作られたのが、MESA EQになります。
MESAフィルターは左右非対称のカーブを作成することが出来るフィルターであり、パラメトリックEQでは調整しにくい、もしくは複数組み合わせる必要があるフィルターカーブをMESAフィルターなら1つで作成可能となります。
図7を例に挙げると、上側のMESAフィルターのようなEQカーブで補正したい場合に、従来のPEQ(IIR Filter)を使って同じようなカーブを作るためには、実に9つのフィルターが必要となります。
フィルター数を増やすことなく(少ないフィルター数で)、音を補正することが出来るMESAフィルターはLakeソフトウェアの大きな特徴の1つと言えます。ISO-Float Electronic Balancingについて
Iso-Floatは、オーディオシステムのグラウンドループを回避するための機能です。音を着色するだけでなく、周波数応答も理想的ではないトランスよりも優れたパフォーマンスを提供します。
上記のことから以下の3つのことがISO-Floatの特徴となります。
- Iso-FloatはLakeで特許を取得した電子回路でノイズを最小限に軽減します
- 周波数レスポンスが理想的ではないトランスを使用しないことで優れたパフォーマンスを提供
- オーディオコンバーターを電気的に絶縁します
Limiter Max™について
LakeのLimiterMaxは2種類のリミッター機能を持ち合わせており、RMS LimiterとPeak Limiterそれぞれスピーカーシステムに対しての保護機能として働きます。
RMS Limiterはスピーカーのボイスコイルにかかる熱に対する保護、Peak Limiterはスピーカーユニットの振幅に対して過大入力保護が目的のリミッターです。
通常の運用時には長期的なスピーカーボイスコイルへの熱に対する保護が必要となり、RMS Limiterは常にボイスコイルが過負荷にならない様に監視をしています。
また、Peak Limiterは突発的に大きな信号が入力された場合、スピーカーユニットを過度な振幅から保護します。
LimiterMaxTMスピーカープロテクションシステムはシンプルで先進的なリミッターです。 制限された使用環境であってもサウンドクオリティを落とさずスピーカーシステムを保護します。アンプとスピーカーの組み合わせに対してシステムが正しく設定されている場合、LimiterMaxは入力が過負荷の状態が続いてもアンプをクリップさせません。
・過大入力で歪んだ信号(赤色)に対してもLimiterMaxを設定することで、リファレンスレベル(青色)に近い信号にコントロールします。
LimiterMax適用後はオレンジ色の波形のようにリファレンス信号と近い音質を保ち、過大入力が続く現場でもスピーカーを保護するだけでなく、優れた再生環境を提供します。
LimiterMaxはWhite Paperを公開しておりますので、更に詳しい内容はこちらをクリックしてご参照ください。
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